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Alba Ballooning  アルバ・バルーニング
               2010年5月25日 訪問  水色枠の写真はクリックすると拡大写真になります。

私が選んだバルーン会社はアルバ・バルーニングだ。ホームページに謳っていた18年の経験を誇るプロ・ライセンスを持つパイロット Pete Forsterとその奥さんと父親らしき方の3人でお世話をしてくれるらしい。意外に少ない。
最後の一人も到着してオリエンテーションが始まる。南のピーブルス州(Peebieshire)の打ち上げサイト(launch sites)から風任せで1時間飛び、着陸し気球を片づけて、 ここに戻るまで3時間掛る。トイレはどこにもないが大丈夫か? などと言われて、先ほどのビールが気になる。
乗客は4組のカップルと1人の女性の9名だ。余り大きくもないワゴン車に詰め込まれ出発する。Peteの父親は乗用車で、一人女性の夫と息子夫婦と孫2人もマイカーで後を追う。 南下すること20分、A703沿いの牧草地に車を乗り入れる。Eddlestonの打ち上げサイトのようだ。
ここで再びオリエンテーションだ。乗客皆で協力してバルーンを膨らませる手順が説明される。続いて乗り込み方の説明や上空での注意事項などがあり、 最も熱を帯びて説明されたのが着陸時の体勢だ。着陸時はかなりの衝撃があるようだ。緊迫感が伝わる。

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乗客全員で力を合わせて重いバスケットを下し、こんな小さな袋にバルーンが収まっているのと 思うほど小さいが、結構重い袋を下す。その袋からバルーンを引き出し広げると、これまた、こんなに大きいのと思うほど広がる。
続いて大きな扇風機で風を送りバルーンを膨らませ、ある程度膨らんだところで、バスケットに備えてあるガスバーナーから熱を送る。すごい轟音がする。 炎がバルーンをかすめて燃え出しはしないか心配になるが、そんな心配をよそにバルーンは順調に膨らみ30分程でバスケットが立ちあがる。 バスケットはロープでワゴン車に係留されているが、バスケットが浮くか浮かない程度にPeteがバーナーを調節している。
オリエンテーションで指示された通り、全員がバスケットの所定の位置につく。バスケットは5つのコンパートメントに分かれている。中央にPeteと一人女性、 両サイドの4つに4組のカップルが乗り込む手はずだ。それぞれのカップルの体型を見比べて、どのコンパートメントに乗るかあらかじめPeteの指示があったのだ。 (因みに1人115kg、カップルで190kg以内と規定がある)
Peteの合図で一斉にバスケットに乗り込む。と言っても、梯子や脚立があるわけではない。110cmの高さのバスケットをよじ登るのだ。 全員無事乗り込むと、改めて着陸時の訓練だ。Peteの掛け声に合わせ、進行方向を背にバスケットの中にしゃがみ込み取っ手に捕まり、 背中をバスケットに押し付ける動作を何回も繰り返し練習する。掛け声は"Down! Hold! Gon, Gon, Gon!"といった感じだ。特に"Gon, Gon, Gon!"が印象に残っている。

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さあ、いよいよフライトだ。Peteがバーナーを勢い良く噴かすと、ゆらりともしないで浮き上がる。地上のPeteの父親が係留していたロープを外すと、ゆっくりと上昇する。 Peteの奥さんや一人女性の家族や通行人の野次馬などの見送りに手を振りながら風任せで北の方向に揺られていく。
丘の斜面に映った気球の姿に感動する。地上で見送る人の姿もだんだん小さくなる。時折噴かすバーナーの轟音以外は音もなく、風も感じない。風に乗っているからだろう。 極めて静かだ。思わず”雲にのりたい やわらかな雲に”と口ずさむ。(昭和44年、黛ジュンのヒット曲だ。古!)

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スコティッシュボーダーのなだらかに折り重なる丘陵地帯の様子が良く分かる。丘の向こうに真っ白な風車が沢山見えてきた(写真上中2枚 気球の陰も入って良い写真と自負)。 Bowbeat Wind Farmだ。Wind Farmという呼び方が新鮮に感じる。
大小の貯水池(Reservoir)も幾つも見られる。写真上右には3つの貯水池が見える。水色と空色の違いに気付く。白く点々と見えるのは羊だ。
林の中に円形の物が見える(写真下左)。Peteが「あそこにミステリーサークルが見える」と冗談を言う。"Northshield Ring"という古代の砦(Fort)の塁壁(ramparts)と 堀(ditches)の跡らしい。この辺りには他にも同じような砦があるらしい。
写真下中2枚に飛び立ったサイトが見える。かなりの時間飛んでいるのだが、まだそんなに離れていないのだ。見送ってくれた人たちの姿はもう見えない。 奥さんと父親、一人女性の家族はバルーンを追跡していることだろう。
サーキット場が見えてきた(写真下右)。これも地図では確認できるが、名前などの情報は一切見つからない。大きな採石場も見えたが、緑の中に無残な掻き痕が寂しい。

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スピード感は全くない。空中散歩という言葉があるが、当てはまらない感じがする。空中に浮かんでいる、あるいは、漂っているという感じだ。 他の乗客も静かな興奮を味わっているのか無口だ。高度計は”110”を指している。メートルかヤードかだろう。
Peteが「記念写真を撮ろう」と言う。ホームページで"In Flight Photo Gallery"を見て、どうして撮影したのか疑問に思っていたが、解明した。 バルーンに取り付けたロープににPete考案の器具を取り付け(写真上左)、それを吊り上げて遠隔操作でシャッターを切るのだ。 その写真は旅から戻ったら既にEメールで送られていた(写真上左から2枚目)。価値ある1枚だ。10ポンド也。
羊や牛が放牧されている。上空を音もなく通って行くのだが、羊は気配を感じるのか群れをなし逃げて行き、立ち止まっては上空を見上げる。
建物は時折大規模なファームらしきものが現れる。農場主のお屋敷らしき建物は立派なものだ。写真下右から2枚目は"Whim Hall Care Home"という介護施設らしい。 その経営者のマナーハウスが写真下右というわけだ。階級社会が空から見えた。

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時刻はもう21時に近い。西の空はうっすらと赤く染まってきた。雲間からゴッドフィンガーが射し込んできて幻想的だ。映画”ノンちゃん雲に乗る”を思い出す。 (”クマのプーさん”を翻訳したことで知られる石井桃子の作品で、昭和30年の鰐淵晴子主演の映画だ。 さらに古!)
そろそろ着陸地点の検討に入ったらしい。Peteと地上で追跡している奥さんとの無線交信が頻繁になってくる。MidlothianのHawgateの東辺りに降りるようだが、 ムーアのような湿地帯の上を低空で進んでいく。低空になるとかなりのスピードで進んでいることが分かる。交信内容は良く分からないが、 着陸地点の地主の許可を得てから降りるらしい。バーナーを小刻みに噴かして高度を調整している。Peteの顔が真剣になってきた。着陸体勢の準備の指示が出る。 ずいぶん長い時間が経過したように感じた後、"Down! Hold!"の掛け声が飛ぶ。いきなり”ガツン、ゴン、ゴン、ゴン”と来てバスケットが倒れ、 外に放り出されそうな衝撃を受ける。フライト前の"Gon, Gon, Gon!"の意味が良く分かった。頭を打って少し痛い。 停止したら、素早く外に出ろの指示だが、ここは記念の写真をすかさず1枚(写真下左)。空はまだ明るい。
降りたら皆で協力してバルーンを畳む作業だ。先ずは空気を抜き、細く畳む。ロープ類も手繰りまとめる。

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これを丸めて元のケースに押し込む。空気が完全に抜けていないから、皆で上に乗り空気を押しだす。連帯感が生まれ、楽しい作業だが猛烈に寒い。 バルーンに乗っているときは何んともなかったが、地上に降りてから急に寒さを感じる。
乗客に対するPeteの作業の指示は当然ながら若い人に集中する。私は最年長のようだし、言葉が分からないからほとんどフリーだ。だから写真も多い。 バルーンの経験があるのかと紛うほど良く働く青年がいた。妻が「アルバ・バルーンの社員になれるわね」と労をねぎらうと盛んに照れている。
バスケットとバルーンの入った袋をトレーラーに積み込み作業終了。奥さんからシャンパンが振る舞われ、Peteから記念の証明証が配られ、談笑の時間だ。 シャンパンのお代わりを進められるが、寒くてとてもその気にはなれない。
記念写真の申し込みをし、狭い車内に押し込められながらも和気藹々と集合場所に戻る。 静かな感動はとても貴重な経験だった。

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Information
 Address  5 Primrose Gardens, Carrington, Midlothian EH23 4LP
 Telephone  01875 830709
 Web Site  Alba Ballooning

詳細はWeb Siteなどでご確認ください。

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